第9章
第9章 食べ物探しの作法

灰色の猫に連れられて、わたしたちは建物と建物の間の狭い路地へ入った。さっきまでの広い道とは違う、薄暗い空間だ。でも変な匂いがする。いろんな匂いがごちゃごちゃに混ざってて、鼻がむずむずした。
「ここだ」
灰色の猫は立ち止まった。目の前には、大きな金属の箱がいくつも並んでた。ゴミ箱だ。わたしは親猫と一緒に暮らしてた路地裏でも見たことがあるけど、こんなにいっぱい並んでるのは初めてだ。
「飲食店の裏手だ。毎日、いろいろな食い物がここに捨てられる」
灰色の猫はゴミ箱に鼻を近づけた。ふんふんって匂いを嗅いでる。わたしも真似してみた。すると、いろんな匂いがわたしの鼻を刺激した。焼いた肉の匂い、油の匂い、何かわからない野菜の匂い。でも同時に、腐ったような酸っぱい匂いもする。
「これ、食べられるの?」
わたしは思わず聞いた。灰色の猫は黄色い目でわたしを見た。
「腐った匂いがするなら避けろ。そこんとこだけ覚えとけ。あとは、匂いで判断する。人間が食べる物と同じだ。食べたくなる匂いがしたら、それはたいてい食べられる」
灰色の猫は器用に爪をひっかけて、ゴミ箱の蓋を少しずつ開けた。わたしもやってみた。最初はうまくいかなくて、爪が引っかかったり、蓋が重くて動かなかったりしたけど、灰色の猫のやり方をよく見てたら、だんだんコツがわかってきた。
蓋が開くと、ごはんの残りが見えた。白いご飯と、茶色い何か—多分、肉だ。親猫がくれる食べ物とはちょっと違う匂いだけど、食べたくなる匂いがする。
「やってみろ」
灰色の猫がそう言ったから、わたしは思い切ってゴミ箱に前足をかけた。身体がぐらぐらして、落ちそうになったけど、何とか踏ん張った。そして、あの茶色い食べ物をくわえた。
冷たい。でも、食べられる。自分で探して、自分でつかんだ食べ物だ。親猫がくれるのを待ってるのとは違う。何だか、すごくおいしく感じた。
「そこだ。それが生き残ることだ」
灰色の猫の声に、わたしの心臓がどきんって高鳴った。