三毛猫メルの冒険/8

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第8章 街の食べ物と生き残る道

第8章 挿絵

新聞紙の上で少し身体が温まったころ、灰色の猫は立ち上がった。

「行くぞ。まずは食い物を探す」

わたしはすぐに後を追った。段ボール箱から出ると、さっきより空は明るくなってたけど、まだどんよりした灰色のままだった。雨は止んでたけど、地面のあちこちに水たまりが残ってて、肉球が冷たかった。

灰色の猫は迷わず歩いた。何度も曲がり角を曲がって、狭い路地裏から、もっと大きな道へ出た。わたしはびっくりした。こんな広い場所、見たことない。建物がいっぱいあって、人間もいっぱい歩いてる。みんな濡れた洋服を着て、急ぎ足で移動してた。

「危ねえ」

灰色の猫が低い声でつぶやいた。わたしが反応する間もなく、大きな黒い物体が目の前をびゅんと通り過ぎた。びっくりして飛び上がると、灰色の猫が尾で叩かれた。

「車だ。絶対に飛び出すな。奴らは速い。気づかない」

わたしは小さく頷いた。心臓がばくばくしてた。親猫との路地裏では、こんな怖い物に出会ったことない。

灰色の猫は歩き続けた。ビル街の片隅へ向かって、わたしを連れていく。そこは人間が生ゴミを捨ててる場所だった。黒いビニール袋が積み重ねられてて、野菜くずや骨、いろんなものが散らばってた。

「ここだ。朝は狙い目だって言ったから、もう盛り過ぎてるが、まだいけるものがある」

灰色の猫は鼻をひくひくさせた。わたしも真似してみた。くさい。すごくくさい。腐った匂い、油っぽい匂い、何だかわからない匂いがごちゃごちゃに混ざってた。

「あ…」

わたしは顔をしかめた。こんなの食べられるの?

「文句言うな。食わなきゃ死ぬ」

灰色の猫はそう言うと、器用に袋を爪で引っかいて、中身を引きずり出した。骨付きの鶏肉の切れ端が出てきた。少し腐ってるけど、まだ食べられそうな感じがした。

「これだ。新しい」

灰色の猫が食べ始めたので、わたしもそっと近づいて食べてみた。くさかったけど、お腹が空いてたから美味しく感じた。こんなことになるまで、こんな食べ物があるって知らなかった。

食べてる途中、別の袋がカタンと倒れた。わたしは驚いて飛び上がった。

「大丈夫か」

灰色の猫は落ち着いてた。よく見ると、ネズミが走り去ってた。

「野鼠だ。無視しろ。敵じゃない」

わたしは胸を撫でおろした。いろんなことが知らないことばかりだ。

「食ったか」

灰色の猫は聞いた。わたしは頷いた。

「よし。次は、寝床だ。夜が来る前に、安全な場所を確保する。この街には、わたしたちより強い奴らがいっぱいいる」

その言葉に、わたしの心臓がまた跳ねた。強い奴ら。それって何だろう。親猫のことを思い出した。お母さんは、本当に生きてるのかな。この灰色の猫は、親猫が戻ってくるかもって言ったけど、本心では戻らないって思ってるんじゃ…

「何考えてんだ」

灰色の猫がわたしを見つめた。

「お…お母さんのこと…」

「そういうの考えるのは後だ。今は生き残ることだけ考えろ」

その言い方は厳しかったけど、どういうわけか、優しく聞こえた。