三毛猫メルの冒険/7

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第7章 生き残るための教え

第7章 挿絵

「…親猫が戻ってくるまで、ここに居ろ」

灰色の猫はそう言うと、段ボール箱の中へ身体を引っ込めた。わたしは迷わず後を追った。中は想像より広くて、新聞紙がいっぱい敷き詰められてた。濡れた身体が、ふわふわの紙に包まれると、思わず「あ…」って声が出た。冷たさが少しだけ和らいだ。

「親猫が戻ってくるかどうか、それはわからない」

灰色の猫は横になりながら言った。その言葉は優しくもなく、厳しくもなく、ただ事実を述べてるだけみたいだった。

「でも、ここで凍死するよりは、生き残る道を覚える方が先だ。親猫だって、お前が死ぬのは望まないだろ」

わたしは頷いた。喉が詰まったけど、頷くしかなかった。

「まず、食い物だ。この街には食い物がいっぱいある。人間が捨てる物の中には、食べられる物がある。匂いで判断しろ。腐った匂いなら避けろ。生ゴミの山は、朝の方が狙い目だ。人間が捨ててから時間が経ってない」

灰色の猫は淡々と説明した。わたしはそれを必死に頭に入れた。

「次に、隠れ場所だ。段ボール箱は最高だ。雨も防げるし、敵も見つけやすい。ただし、人間が来たら邪魔扱いされる。その時は、いかに素早く逃げるか。走ってる時は、細い路地を選べ。大きい犬は細い場所に入ってこられない」

「敵…ですか?」

わたしは思わず聞いた。

「野良犬、野良猫、人間。この街はそいつらのテリトリーだ。お前は新参者だから、誰かに見つかったら、まずケンカを吹っかけられる。その時は、無理して勝とうとするな。とにかく逃げろ。生きることが全てだ」

灰色の猫の黄色い目が、暗い中で光ってた。わたしはその目を見つめた。

「お前、名前あるか?」

「メルです。わたしはメル」

「そか。わたしはクロだ。この場所で五年は生きてる。何匹もの仲間を見送ってきた。その度に思う。生き残ることが、一番大事だってな」

クロはそう言うと、背を向けて丸くなった。わたしは隣にそっと身体を寄せた。段ボール箱の中は、思ったより温かかった。

「明日から本当の修行が始まる。今夜はよく寝とけ」

クロの声は、もう眠たそうだった。わたしは頷いて、目を閉じた。外では雨はもう弱くなってた。けど、わたしの心の中には、決意がぐっと詰まってた。

親猫を探す。生き残る。そのためなら、何だってやる。そう思って、わたしは眠りについた。