三毛猫メルの冒険/5

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第5章 段ボール箱の中の出会い

第5章 挿絵

角を曲がると、段ボール箱が積み重ねられてるのが見えた。四角くて、どれも茶色で、何個も何個も重ねられてる。路地裏での生活では見たことない、謎めいた物体だった。

「あ…」

その時だ。段ボール箱の隙間から、かさこそって音がした。わたしの耳がぴんと立った。好奇心が、一気に湧き上がった。あの音の正体は何だろう。ネズミ?それとも…

「誰だ」

声がした。びっくりして、わたしは飛び上がった。低い、ちょっと怖い声。猫の声だ。それも、わたしより大きな声。

段ボール箱の隙間から、薄汚れた灰色の毛が見えた。その奥に、黄色い目が光ってた。

「あ、あの…」

わたしは思わず後ずさった。親猫に教えてもらったこと—知らない猫には近づくなって。でも、この猫も野良猫らしい。もしかして、この場所のことを知ってるかもしれない。

「お母さんを探してて…」わたしは勇気を出して言った。「朝、濁流に流されちゃって…」

灰色の猫は、じっとわたしを見つめてた。警戒してるのか、それとも別のことを考えてるのか、よくわかんない。でも何秒かしたら、段ボール箱の隙間から出てきた。わたしと同じくらい、いや、ちょっと大きいくらいの野良猫だ。

「流されたのか。大変だな」

その猫は呟いた。冷たい声だったけど、完全に敵意があるわけじゃなさそうだ。

「このあたりで、オレンジ色の猫、見ました…?」

わたしは必死に聞いた。灰色の猫は首を振った。

「朝は雨がすごくて、誰も動いてなかった。お母さんはきっと、どっか安全な場所に避難してるはずだ。朝になれば、もしかしたら…」

わたしはそこまで考えて、ぐっと唇を噛んだ。朝。あの怪物みたいな濁流を見たら、お母さんだって逃げるしかなかったはずだ。親猫も、わたしと同じように流されてるかもしれない。

「とにかく、ここにいたって何ももらえない。食べ物とか、探してみるか」

灰色の猫が立ち上がった。わたしもそれについて行った。段ボール箱の周辺を歩くと、人間が捨てた食べ物がいくつか落ちてた。ちょっと古いパンの欠片とか、小さなソーセージとか。濡れてて、泥がついてたけど、わたしは腹が減ってたから、思わず食べちゃった。

「そこ、水溜りもあるぞ」

灰色の猫が教えてくれた。雨で溜まった水だ。濁ってたけど、飲まないより飲んだ方がましだ。わたしは必死に舐めた。

夕方になると、灰色の猫が段ボール箱の中に誘ってくれた。

「ここ、結構温かいよ。一人で夜を越すなら…」

わたしはうなずいた。段ボール箱の中は、濡れた毛並みを乾かしてくれるいい匂いがした。まるで、新しい寝床をもらったみたいな気分だ。

「明日は…お母さんを探す」

わたしはそう誓った。灰色の猫は何も言わなかったけど、そっとわたしの隣に寝ころんでくれた。